風呂敷女/白寿
 
その日の晩、女は禊の真似事をしに
旧い銭湯へ向かいました。
目的は不安を拭うことにありましたが、
それは体裁上の話で、本当のところは
出来もしない覚悟を決めに銭湯へ赴いたのでした。
  
ああ、そろそろいつもの風呂敷包みを出してきて、
全ての想いをひと思いに包んでしまわねばならない。
きつく、きつく、風呂敷の端を結わえて、
思い出の一つひとつを
深く、深く、仕舞ってしまわねばならない。
 
こうしてはいられない。
だって、逃げ遅れて倒れるのは私だもの……。
 
 
「紫丹の風呂敷包みを背負って、私はもうすぐ遁走します」
 
 
毎年秋になると、曼珠沙華がたった
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