風の残り香/
草野大悟
夏
午後
湖まで
二万歩を歩く
ふたりで歩く
途中
息づかいが消え
ふり返ると
青桐の葉を持って
笑っている。
夜
タバコを買いに
五階をくだる
ふたりでくだる
途中
影が消え
ふり返ると
青桐の葉を持って
笑っている。
おおきな葉は
土色に
風の姿を残し
ふたつ
おれたちのアパートの
白い陶器の中に
吹いている。
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