ゆめとぼく、ときときみ。/山中 烏流
 
かを、
 呟いていた/


鈍く刺すエンジン音に
驚いて目を開いたぼくの
鼻先を、ゆっくりと
石鹸が掠めていく

いつの間にかきみは
その背を羽ばたかせて
鳥になるの、と
呟いたとおりに
空へと消えていた


/エンジン音は
 足元でまごついたままに
 きみがくれた夢を
 消せないでいる
 
 傾き始めた空に
 あの日の砂時計が
 揺らめいて
 見えた気が、した/
 
 
きみの
スカートのプリーツが
視界の端ではためいたのを
ぼくは忘れようとして
時計の針を戻す

そして
遠ざかるエンジン音に
きみの笑い声が
眠るように
溶けた気が、した。
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