彫刻/プテラノドン
彫刻家であると同時に、優秀な墓石職人でもあったミロは
首だけの友人に言った。―墓の無い墓もあると。
一方で、友人は相方である胴体の到着を待ち続けていた…切り離された
胴体は雑踏の中をふらふらとさ迷い歩き、類を呼び、およそ世界とは
無関係な女のもとを泊まり歩いた。女たちは引き止める腕と引き替えに
男の首元からぶら下がるロケットの中に、大衆雑誌の切抜きやら
アルバムに埋もれた化石のごとき写真の数々、過ぎ去りし者の顔写真を
入れることで、なけなしの安泰を手にした。あるいは、
そのなかの一枚の写真に思い当るふしがないだろうか。机の引き出しか、
写真立てか、封じこめられながらも、そこで出
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