帰りの道の少女/千月 話子
おじいちゃんが 言ってた
神様に ありがと ありがと
小走りの子馬 お辞儀しながら
教科書が 踊ってる
神様の口角が少し上がった?
午後3時
お寺に向かう階段の途中
座り込んで 口笛を吹く
斜めに居る太陽が
山の稜線に光映すのを
眺めながら ひゅるるるる
蝉の抜け殻が
さざ波のように折り重なって
夏は少しずつ 子供の手の平で
溶け出している みたい
コッペパンを3分の1
ランドセルから取り出して
小さくちぎって
空高く 放り上げる
高い木の枝から トンビ
美しい姿勢で風に乗り
掬うように食事する
くるる
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