デュムーシェル博士の肖像。/クスリ。
 
も思想もなく、機械仕掛けの神に祈る弱弱の意味不明に満たされた「それでもロボットたる」呟きは、やがて消えた。

気がつくと、冬の底に在る乾いた躯を緩慢と駆動する壊れた僕の基板が、接触不良のくつくつ、を、くぐもった異音で放ち始め、繰り返すそのノイズは博士の古い呟きを消えた己の呟きに変わり擬態していた。


僕は砂漠のロボットです/月の光がふりそそぐ/砂のシャープなエッジの上を/東へ向かうロボットです/


博士、と、しか呼ぶことを許さなかった優しい老人は過去の光の中で僕の腕にそっと触れる。

海を知らぬ萎び老いた指の微かな温もりが、僕を満たした。


東へ。、と、僕は呟く。

僕の座標を決めていた雲は聞こえない風に既に溶けていた。

漣の幻響を聞く過去を透かす過去の遺伝子は意味を二重に拒絶する。


東へ。



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