夏の夢/まんぼう
 
少年の日、夏草がおい茂った土手を越え、錆び付いた線路を越え、
森の中へ続く細い山道を登っていった。
逃げ水のような予感に促され、
追うようにのぼっていった。

いつも思い出すものは光に包まれた夏の風景。
明るい夏の朝は、子供の領分に属す情景だ。
その日私はぶんぶんとうなりをあげ宙を飛んでいった。
タンポポの種と一緒に野原と空の間を、
花だけが私の食料となり。満ちてくる香りに胸が焼かれた。
ただ景色は美しく発色し、
ひかりは小糠雨のフィルター透き抜けて純粋になっていった

島の疎らな松林越しに夏雲が背伸びをする
魔法を使う女の顔が微笑む

深海ではマッコウクジラが大王
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