名もなき夏の島にて ★/atsuchan69
君が仲直りのカクテルを運ぶと
ふたたび口論をはじめて‥‥
「いつかまた逢いましょう
化粧をする鏡の中で
別れ際にそう云ったから、
君が立ち去った後も
ずっと僕は此処に留まったんだ
そのうち俄(にわ)か漁師でも演じて
博打で船を一艘ぶん捕れば
ようやく君を忘れてもよい頃だと思った
時化の夜に船を出し、
やがて大波をかぶり海の藻屑と消え
――つづきを話そう、
強い風に鳥たちが流されてゆく
気紛れな海は忽ちにして豹変した
岩場に白波が砕け、
それは人の背よりも高い
僕は一羽の海猫に生まれかわり
今日も必死で、この辺りを飛んでいる
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