一枚の絵/たもつ
 

年老いた画家は絵の中の少女に羽を描いた
羽を得た少女は絵の中の空を楽しそうに飛び回った

画家は少女にもっと立派な羽をつけたくて描き直そうとしたが
羽をとられてしまった少女はうつむいているばかり

そしていつしか画家は
羽を描く方法を忘れてしまった


でも、本当は
最初から少女も画家も存在なんかしていなくて
生乾きの筆が一本ころがっている

そんな絵が1枚だけ飾られた美術館を
私はいつも持ち歩いている





戻る   Point(3)