嘘じゃないかもしれないけど、/阿片孫郎
 
りはとても、なんとも自分でもわけがわからないくらい、
 かたくなになってしまって、僕も、どうしていいのだか…。
 もて余しているんです。
 わかってる。
 でも、最初のひとことが言いだせないんだ。
 電話じゃ、ダメだよ。逢いたいよ。
 あのコンビニの前で待ち合わせて、僕の部屋においでよ。
 今度はたぶんうまくいくよ。やり直そうよ。

「やり直すのはムリだよ、だってわたしには彼氏がいるんだよ」
 知ってる。
「彼氏がいるのにセックスするの?」
 したくないの?
「ダメ…、でしょう」
 …、思い出しちゃったよ。
「なにを?」
 それは…、
「それは?」
 それは。キミの唇の感触とか、おっぱいの重さとか。キミの…、匂いとか体温だよ。
「ねえ、あたしに今すぐ会いたいと思ってる?」
 逢いたいよ。


 嘘、
 嘘じゃないかもしれないけど、
 嘘かなと、用心します。
 全部が嘘とは思わないけど、本当の気持ちじゃないでしょう。
 気まぐれにもほどがあるよ。
 まあ、いいさ。だって、明日は満月だから。
 
 満月なんだから、しかたがないよ。
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