つばさ みどり ?/木立 悟
 



目から水を飲み
花になり
やがて言葉に
うたになる


数歩のぼる風の音
ひとつひとつの段の上に
しずくを含んだしずくが震え
空を囲む樹を映している


触れてはこぼれる夜の明るさ
数えることさえ忘れつづけて
指は水になってゆく
夜は水になってゆく


生まれつづける蛾のなかに
蝶の羽を持つものがあり
蜘蛛の巣をふちどる朝の光
打ち寄せる原のかたちを見ている


石の段を水が流れ
道は暗い緑にひかる
大きな大きな朝の手まり
午後の手のなか しずくにかえる


花とうたは坂を下りる
夜が川を流れ来る
まぶたとまぶたへ沈む星
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