雨細工の町/石畑由紀子
 

乱視の交差点が光にまみれている
穴に落ちてしまわぬよう
慎重に渡る


いつか
二人で広げた新しい傘の下
けれど赤と青は紫にはならず
個体であることのかなしみを知った


ほの白く輪郭の立つ道
街灯は長い髪をゆらしながら
横顔で私を一瞥して
すぐにそれぞれの孤独へ帰ってゆき


理容室のネオン管だけが
届かない空に手を伸ばし続けている


傘をほうり
雨を鳴らして歩いてゆく
一人とはどこまでも自由で
どこへ行こう
どこへ帰ろう
乱視の交差点 光る
穴に落ちてしまわぬように
子供が白線だけを踏んでゆくように
慎重に渡る
けれど




なりふりかまわず

本当は飽和してしまいたかった
あの時も、
あの時もあの時も、


あの時も、







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