「 殺夏。 」/PULL.
 

席に叩きつけた。顔に眼球を受けた観客が、
狂喜の声を上げる。「もっと殺せ!皆殺しに
しろ!。」おれは吼えて、観客席に飛び込む。
逃げまどう観客たちを、五人六人と殺す。歓
喜とも悲鳴ともつかぬ声を上げ、やつらは死
んでゆく。「助けてくれ。」そう聞こえた気
もするが、構わず、おれはやつらを殺してゆ
く。やつらは弱い、すぐに死ぬ。だけどおれ
は止めない。一人も残さない。皆殺しにする。
なぜなら「殺せ。」と命じたのは他でもない、
やつらなのだ。やつらがそう、おれを作り替
えたのだ。おれを見る、やつらの目の中で、
殺人鬼が笑っている。それがおれだった。












           了。


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