少女の願い/なかがわひろか
少女は影と仲良し
毎日毎日一緒に
日が暮れるまで遊んだ
少女は
周りの大人たちの話す陰口や
虚飾に包まれた世辞を聞いては
呆れ果てていた
大人になんかなりたくないわね
少女はそんな風に
毎日影に語りかけていた
影は黙ってうなずいた
ある日少女は
大人になることをやめた
私はもう大人にはならないわ
少女は影にそう伝えた
幾年が過ぎた
少女は少女のままだった
変わらず少女は
影と毎日日が暮れるまで遊んだ
周りの大人たちは
どんどんおいぼれ
そのうち一人で歩けなくなったり
一人二人と減っていった
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