ディズニーとマクドナルドと劇団四季に命を狙われる男/カンチェルスキス
 
きた。他には誰もいなかった。
 バスは走っていた。
 おれの前の座席まできた。おれのほうを向き、両肘を座席の背にもたれかけさせ、膝をのっけて座った。制帽をつばを後ろにしてかぶってた。後ろ髪を伸ばしていた。細面の香港のチンピラみたいな男だった。
「バス、運転しなくていいのか?」
 おれは言った。
「ああ、いいんだよ、あんなもん。毎日同じこと繰り返してんだ。あれのほうでも、あれって言うのは、もちろん、バスのことなんだけどさ、いい加減、体で覚えてるだろ、勝手に走っていくもんさ。スポーツ選手がファインプレイの後で『体が勝手に動いた』ってよく言うだろ。日々の鍛錬による潜在意識の反応ってやつさ。あれ
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