生き物/松本 涼
 
無数の生き物たちがざわめいている
走りながら靡(なび)きながら留まりながら

かつてを振り返ることも無く
いつかを探ることも無く

連続する慌ただしい揺らぎの上に立ち
私は空(から)になった身体を描いていた

そこには何も無い
ここには何も無い
そうはいかない

無数の生き物たちがざわめいている
最低速で溶けていく空の舌の上で

そこはもう満ちている
ここはもう満ちている
隙間もない

ざわめきの重力が
身体を埋め尽くす

そして私は駆け上がる

無数の生き物たちに囲まれて
空の舌の上で私は溶けていく

どうしようもなく私も同じ
満ちた生き物なのだ




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