追悼/たにがわR
散骨
はらはらと
ちりゆく骨のかけらが
潮騒にくるまれて白波に落つ
よどむ青、解けていく白
満ちてくる月の海
素足が冷たさに触れて
あヽなんと夜の海は
こんなにも音が無いのか、と
海から離反する凪が私を襲い
大地の呼吸音が耳に木霊する
あふれていく私の人間性
君は本当に生きていたのだろうか
私はいまだに
信じられずにいる
長雨
降り止まぬ雨
と、大気を包む冷気
ふうせんのようにしぼむ人たち
秋の訪問に腰の右側の骨がキシキシと鳴る
骨の痛みが生きている痛さと知り
逢い交わり、そして争い
忘れかけていた君の温度
左手が、まだ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(5)