墓参灯籠/山内緋呂子
 
手前どもの命日が近づいて参りましたので
赤の寺子文様
直線紬を虫干

お出かけする際は
この着物に 白髪のボブカットかつらをつけまして
すすきと下駄で闊歩したもので御座います
家に帰ると必ず主人は
かつらをとれ と申しました
家では黒髪でいてほしいとのことでした

虫干しても虫は去らないので
銀杏のすだれをくぐり
さいたま駅 はす向かい
黒いガラスと はしごのあるお店にて求めました

夜も白んで参りましたので
そろそろ電車にて候
木こりの切株の残る屯田墓地で
守衛殿(どの)に清礼
そして投げ入りますと

            
       マ
[次のページ]
[グループ]
戻る   Point(2)