墓参灯籠/山内緋呂子
手前どもの命日が近づいて参りましたので
赤の寺子文様
直線紬を虫干
お出かけする際は
この着物に 白髪のボブカットかつらをつけまして
すすきと下駄で闊歩したもので御座います
家に帰ると必ず主人は
かつらをとれ と申しました
家では黒髪でいてほしいとのことでした
虫干しても虫は去らないので
銀杏のすだれをくぐり
さいたま駅 はす向かい
黒いガラスと はしごのあるお店にて求めました
夜も白んで参りましたので
そろそろ電車にて候
木こりの切株の残る屯田墓地で
守衛殿(どの)に清礼
そして投げ入りますと
マ
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