茫然の櫃/黒川排除 (oldsoup)
影を落すように
身体の中で必要とは思われない部分を
ひとつひとつ落としていったら
何一つ残らなかった
落とすべき影も無く
たとえ落としていたとしても
それを見るべき瞳も無い
だがやさしい人が後ろから
身体の部分をすべて拾って付いてきていた
廃墟の中で迷っていたのだという
そういえばいつの間にか廃墟の外にいる
内側でさまよっていたものは何だったか
内側でさまよっていた理由は何だったか
思い出せずに
少し足りない身体を組み立てた後
握手を交わした
その人の腹は膨れていたようにも見えた
親ならば
腹を空かせて泣いている子供に
何かしてやりたいと思うだろう
あるいは
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