失魂/秋也
 
有史以来
人が
夕焼けに勝った瞬間はあるのだろうか
魂が離れ
棺の中で
物体が
停止する時
そこに
無い
モノへ
向けて
投げられる
すさまじい
悲しみ
注目
勝るといえば
その時ぐらいか
それでは
もう大気に溶けてしまっている
半分以上
夕焼けと同化している
勝ちたいんだ
体と心が一致している時に
どんな美しい夕日よりも
どんな激しい赤雲よりも
どんな哀しい朱にも
勝ちたい
血と肉
脳を持って
勝ちたい
だってそうだろう
その時
人は
始めて大きな何かを超えるんだから
もう棺が花で埋まる
咽るように香る
赤バラ
咽び泣き
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