マスターベーション/佐々宝砂
ドアを開けて灯りをつける
ベッドのうえで
かさり と
金属製の瞼がひらく気配
一本の髪もない頭部には
銀色の鱗が移植されている
人工の瞳孔は菫色で
肌は光沢のない燻銀
たとえば
ちいさなころ
うっかり見てしまった官能映画に
まるで刺激されなかった
この孤独を
あるいはやはり
ちいさなころ
バーバレラのオルガンにこそ
刺激されてしまった
この哀しみを
いま癒せるなどとはつゆ思わないけれど
寸胴のウエストを抱きしめれば
お約束の囁きがかえってくる
その囁きをインプットしたのが
わたしだとしても
機械仕掛けの恋人は
ほのかな体温でわたし
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