甲とうた/木立 悟
 



声の名残りが
短く重なり
雨と雨の手
屋根に眠る手


甲をめぐる
ひとつの羽
道はかわき
風は糸に寄りかかる


見えない刃と刃がすれちがい
音だけが回り 残される
夜が光に唱ううた
雨のなかをすぎてゆくうた


からまり消える 水の糸
息と息と息の端々
踏み出した足は一を拒み
踊り場をゆうるりと曲がりゆく


窓の内側を欲しがる手
屋根を開け 静かに降りてくる
甲には
羽の名残りの骨がまたたく


つながるようでつながらぬ道
水を光に分ける道
ひとつに重なる甲と甲
空と海の隔たりに咲く












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