赤い風船/快晴
 
あの夏の日の遊園地
父に風船を買ってもらった
赤くて丸くて
自分の顔より大きいやつを

風船を手に
浮かれてはしゃぐ私を見て
父は「手を離しちゃ駄目だよ」と言った
私はこくりとうなずいて
きつく紐を握り締めた

遊園地からの帰り道
私は衝動を抑えられなかった
この赤く染まった風船を
空高く飛ばしてみたいという衝動
せっかく手にした風船を
手離す瞬間のドキドキを想像し
私はムズムズと身悶えをした
真っ青な空に映える赤

考えてみれば小さな頃から
私は「手離す」ということが
好きだったのだろうと
君を見ながら今、思う
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