MAGENTA/結城 森士
 
いつまでも下降ループを繰り返す思考の波に飲まれながら、
マゼンタの花弁から滴り落ちた一滴に想いを膨らませていた
物事を割り切ることはなんて純粋で不誠実なんだろう

地下鉄で、機械の風に当てられながら目眩と後退を繰り返し
途中下車は出来ません、トンネルは生暖かい呼吸を繰り返し
プラットホームで入れ替わる人々の足々、降ろしてください
無限に続いていく孤独なレールの上から、降ろしてください
造形物と、無機質なオブジェクト、忘れ物にご注意ください

乾ききった都会の雑踏の中、朦朧としながらすれ違った人達
笑顔を浮かべながら消えていく友人、ビルが断罪した視界で
視線を合わせずに過ぎ去った十字路、垂直が曲線に揺らめく
青空、青い光、点燈する信号機、出口の無いトンネル、夕陽
マゼンタ、いつまでも沈みゆく太陽、いつまでも下降する涙
あまりにも惨めな虚勢、自分の為だけに生きているだなんて

影が太陽の死に沿ってどこまでも伸びていくのを見ていた
物事を諦めないことはなんて誠実で汚れたことなんだろう


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