生きたがり屋/青井 茜
 
死にたい と
高齢社会に溶けた脳で
夏の高い湿度の中
叫ぶ
 
肌にまとわりつく
生き甲斐 は
段々と煩わしいものになってゆく
 
 
短い命で
生きることを精一杯謳う
セミに生まれ変わりたいと
願いながら
 
私は手首を切るのだ
 
 
幾重にも重なったミミズからは
青い筋さえも覗かなくなって
 
私は虫で遊ぶ少年のようだった
 
 
そこに珍しく
楽しさなど感じてしまったから
 
私はまた
 
死にたい と
少子化に飽和した心臓で
冬の低い気温の中
呟く
 
のだろう
 
 
 
 
 

戻る   Point(4)