電話/はらだよしひろ
いつの間にか
喧嘩になった
瞼の奥の埃が積もって
想いが行き過ぎてしまったのか
あどけなく
そして
空ろに
互いの気持ちを
飛ばしたね。
だから
言葉が刃になってしまったんだ
好きだよ
僕を流れる熱さが
ほとほとと込み上げて来て
君を抱きたいと思った
声
悲しい声
電話の向こうの悲しい声
謝らなかった理由
君の言葉に納得できなかったから
それ以上に
君が好きだから
裡にこもったわだかまりを
体いっぱい声にしても
僕は三十一年間生きてきた
全てを使って拒んだんだ
僕の全身を使って
僕を殺し
君の悲しさを拒んだんだ
まだ何も伝えていない
けど
今度あった時は
涼しげな顔で
笑っていたいね
僕にも理由があって
君にも理由がある
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