ノート(指)/木立 悟
 

光したたる場所に立ち
足元にまとわりつく魚を見ている
緑が照らす灰の息
耳のすぐそばにいる雨雲



肩に沿って
光はこぼれ
水に落ちて
声に変わる
たどりつけ
たどりつくな
とどこおれ
とどこおるな



彩りに至らず
はぐれ迷う火
見つめる瞳
見果てぬ瞳



泥と緑の骨を映した
水たまりのかたちをなぞる指
失くした月を捜して歩む
夜の終わりへ向かう道



汚れた腕に光は散って
指に小さく降りつもる
水から水へわたる雷鳴
魚が去ってゆく方へ
降りてくる蒼い夜の柱に
指はいくつも月を描く
声と水のしるしを描く






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