飛行船に乗って/長谷川智子
だれかの温かい手につられて
また踏んだあの甲板
そう 見なれた茶色くまぶしいところ
窓の外はお祭りさわぎ
色とりどりのじゅうたん 花畑のような
いつもぱっとしないこの町もこの日だけは色めき立つ
ああこんなことなら先にキャラメルポップコーン買えばよかった
あとのまつり
温かい手のぬしの指先が窓の一点に注がれた
ごった返しの空間少し離れた一角に紙芝居小屋
ここはうってかわって空いていた
ここにぽつりぽつりと座っている子供たち
「さあおはなしのはじまりはじまり〜♪」
小さな箱の幕が開いて拍手の波
のぞいている双眼鏡のアングルをしぼった
そこには・・・
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