視覚的絶望/朽木 裕
赤レンガの教会を目蔭をさして見上げたら
十字架が 落ちてくるように見えた
それは流れゆく雲の見せた錯覚
落ちてきたのは唯、その影
その日 空は嫌になる程 青くて
私は天に心を見透かされた 子羊
せめて今日が曇天だったなら
雨でも降っていたならば
いかに哀しいオルガンの音が聞こえてきたとしても
こんな 気持ちにはならなかった筈だ
目をつくような空の青に
私の枷は重くなり
太陽が照らせば照らす程
心の影は昏く濃くなる
嗚呼、歪んだ視界ならば
明日も明後日も目を閉じたままでいようか
それでも瞼に映る八月の青い空は
落下する十字架と共に
私の心を焼き尽くすに違いない
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