間違い電話/悠詩
 
戸の中にお嬢さま
井戸の外にお嬢さま


受話器を置いて立ち上がる
彼女がいたであろう東尋坊
消えたはずの彼女は
そこでこちらに背を向けて



こちらの基準で本物を選べるはずはなく


わたしの作り出した分身は
わたしにしか見えない



後ろからお嬢さまに抱きつくと
醜い強がりは消えた



ねえ 気づいてよ
わたしも気づくようにするからさ
あなたじゃないヒトとの
間違い電話は
もう切ってしまいたいの







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