迎終/山中 烏流
閉ざされている
その内輪の世界を
私が覗き見ることはない
確実に近付く
永遠の始まりは
今、どこの家の扉を
叩いているのだろう
呼吸は既に
容易ではなくなった
熱風が肺を焼くことを
人は
呼吸と呼ばない
空がただ
赤く、青く、黒くなる
正常を保たなくなった視界に
正常の意味を問う
永遠の足音が
段々と聞こえてきた
私は、扉の前に立って
迎える準備をする
叩く音が聞こえる前に
最期だからと
自分の名前を、呟いてみる
乾いた唇から
こぼれでたその意識は
今更になって
嗚咽を上げていた
ただ、生きたい、と
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