シャッターとタランチュラ/結城 森士
 
雨が降っている。

たった一人で行った美術館の帰り道とか
「黒い雨が、ストロボをたいて、あ、あ、消えていく」とか、そんな
(暗い記憶や雑音などは)補正しなければ
(だから、暗い記憶など)補正しなければ
モノクロの水溜りから、浮上した白い太陽
あ、あ、眩暈。…タランチュラの見た夢、か

…孤独になろうとしたわけではない
もっと幸福な何かを探していただけ
こんな日にするつもりじゃなかった
ただ一人でいるのがとても怖くて…
知らない内に
水溜りの中に胸像を作っていた
それは僕よりも遥かに人間的で
自分よりも上手に笑顔を作った
そんな風に澄んだ8月の水底で
僕は2度目の
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