天衣無縫/相良ゆう
舞の名は『詩吟』といい、此の羽衣の名は『無縫の天衣』といいます
あなたも知っているでしょう 言葉で紡ぎ その旋律で舞うものたちのことを
しかしその本質を知るものは少ないのです」
美しく舞い昇天していく天女に魅入られ 憧れに近い嫉妬を抱きながら 不意に溢れる涙
何故か分からぬまま ふと気づく 彼女の舞こそが「本質」なのだと
そして此の涙は 私が本質から余りにも離れているがために・・・
そのことを知ってしまったがために・・・
「此の羽衣は 得るものではなく 与えられるもの
此の舞は 己のためではなく 他がために踏むもの
今も昔も 命は此処に
此処より永久に
つながっているものなのよ」
ある日 空から降りてきた天女が落したものは
見えない糸で紡がれた 不思議なふしぎな無縫の羽衣
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