えいえんの夏/吉田ぐんじょう
八月が終わらなければいいと
願っていた
そのときわたしは
小学五年生で
朝顔を上手に育てることが出来なかった
そして
支柱にぴよぴよと巻き付いた
枯れた朝顔に
まだ毎朝ぼんやりと水をやってしまうような
そんな子供だった
一度だけ
八月の終わりに目を覚まして
日めくりを見たら
八月三十二日だったことがある
家の中には誰もいなくて
晴天なのにいやに薄暗かった
窓を開けたら
ぱたぱたと
蝉が死んで木から落ちてゆくのが見えて
見覚えのある夏は
そこにはなかった
食卓に置いてあった茹でとうもろこしは
腐っていて嫌なあじがしたし
どの漫画もおもしろ
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