ぼくたちが童貞だったころ/大覚アキラ
ぼくたちが童貞だったころ
汗で肌に張り付いた
女の子たちの制服の白いブラウスは
未踏の大陸の地図のように見えた
街角の薬局の店頭では
小箱に入った不穏な計画が
巧妙にカムフラージュされて
次々に売り捌かれていた
夜十一時になるとうさぎちゃんが
温泉の紹介をするものだから
ぼくたちは行ったこともない温泉の
泉質や効能にやたら詳しくなった
コロンブスになった気分で
未踏の大陸に上陸してみたものの
物珍しかったのは初めだけで
もう地図なんか要らなくなって
それでもこの世のどこかには
まだ誰も足跡をつけていない
未踏の大陸があるような気がして
ぼくたちは帆を立てるのだ
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