白桃/umineko
 
真夜中。わたしはシンクの前に立つ。わたしの右手にはナイフ。左手には、先輩からいただいた、いかにも高級そうな白桃。

何をかくそう、わたしは白桃が大好きである。薄い皮を剥いだあとの、あのけば立った白さが好き。押さえる先から変色してやる気をなくすわがままさが好き。細かな繊維のからみあった瑞々しさが好き。それから。それから。

わたしは。果物ナイフで、すーっと上から下へ切り込んでいく。白桃は抵抗しない。白桃はなすがままだ。そして切り口から変色していく。それから、わたしは日焼けあとの小学生のように、慎重に薄皮を剥ぎ取ってゆく。なんとなく、いやらしい。どこがどう、ってことはないのだが、なにげに、微妙
[次のページ]
戻る   Point(3)