灼熱の盆帰り/atsuchan69
 
縦機です

 うーん、まるで昆虫。
交尾するときの腹部の動きを想わせるような
機体後部の推力偏向式ノズルが既に地面を向いている
リフトファンからの強烈な噴射が無数の砂粒を舞わせ
あたり一面、乱暴に立ちのぼる砂埃は
殺伐とした緑なき景色と魔を秘めたピラミッド、
その大いなる輪郭さえ尽く消してしまった

 やがて視界が晴れると着陸した機体に人影が・・・・

透明なキャノピー(天蓋)は横に開き、
存在しない筈の操縦士がヘルメットを脱いだ
流れるようなブロンドの髪が、サラサラと肩に零れる
 「いったい誰なんだね、君は?
眉間に皺寄せ、訝しげに私が尋ねると
彼女は少しはにかんで笑い、
 「マレーシュ と、云った

やや遅れてよく響く声でチャーリーがこう付け加える、
 「このあと機は無人で地中海メガフロートへ帰還させます
 ――どうかよい休暇を。マレーシュ!









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