それで埋め尽くされた/狩心
疲れた斧は
何処へ行けばよいのだろう
斧はもう
斧の原形を留めず
只の丸い鉄の塊
誰も来ない場所で
一人休憩した
睡魔に襲われて
涙が零れそうだった
暑い日差しに
握り締める拳
糸に引っ張られて
体が動く
もう嫌なのに
同じ場所へ戻されてしまう
体は三箇所を移動する
せめて
心は地の果てまで
行けよ
苦しい呼吸は
無声映画
表情と動作で物語らないといけない
無表情
無動作
硝子球は割れた
その中の湖も
硬い地面へと
消えた
一つの事に
決められたなら
苦しみも少しは和らいだだろう
しかし
木の枝のように伸びた者は
空を支え切れず
自らの恐怖を
演じるしかないだろう
力が拡散する
恐るべき自由
しかしそこでも
何をやるかは指定された
特定の場所に
特定の物が配置され
特定の動作があった
不特定には成れなかった
それを望んでいるのに
この世界にそれはなかった
それに気付いてしまった午後
一人何も出来ないまま
立ち尽くしていた
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