渇望/ゆるこ
 
たまらなく生きたくなった日
 
空は青々として
重い曇が素敵な程輝いていて
泣くことしか出来なかった心が
最後の雫を溢した
 
空気はみずみずしく
仄かに甘い香りを漂わせて
いつかの縁日を思い出した
繋がりを拒んでいた心が
ぶるり ぞくり と震えた
 
この指先はなんのためにあるのかと
突然の思考の降臨に
私は愛、と
いっちょまえに答えられなかった
 
この指先は未来を紡ぐためにあるのだ
 
 
掌を空にかざす
世界をすり抜けたこの手は
きっと笑っているはず
 
綺麗な色をした蝶が
枯れ葉のように世界に落ちた
 
私は微笑みながら
この指先で蝶の羽を
優しく
優しく
 
千切った
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