彼の地 天草にて/渡 ひろこ
 




ところどころに
山ユリが
来訪者の足をとめるように
有明海からの潮風に
かすかにゆれている




レンズをむけられ
わざとはしゃいで見せる
私を
ファインダー越しにのぞく
あなたの目には
どう映ったのだろう


なかなか終わらない
石のきざはしを
大きな背中を見つめながら
踏みしめていく


こうやってあなたは
何の疑念もなく
もう一つの
怠惰で脆弱な人生を
これからも抱えていくのだろうか
重荷とせずに




やっとたどり着いた
展望台から
見下ろす教会は


澄んだ青を背景に
あまりにも絵ハガキのようで
なぜか私の核心には
迫ってこなかった


あなたの
純朴すぎる愛情に
似ているのかもしれない・・・

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