「ラブアンドピース」に対する異議申し立て/佐々宝砂
 
においてはずいぶんと不用意にバカバカしい光景を描いている。あんまり女をバカにしないでほしい。とはいえ面白いのは確かだから、まあ、百歩譲って認めよう。ヴァンヘイレンとベ平連をひっかけるとは、私にはとても思いつけないような高度な地口だ。

私は認めよう。「片思いの彼女に宛てたラブレター」も「めっきりと薄くなった髪の毛」も「あの頃のギター」も認めよう。小田実という希有な人物の死を詩に利用したことも認めよう。私にはひどくバカげたプロトタイプに思われる詩の話者のキャラクターも認めよう。彼女はおそらく現実には存在しないのだが、現実の女以上のリアリティを持つ。リアルではないからこそリアリティを持つ。男性に生
[次のページ]
戻る   Point(20)