「扉」/和 路流(Nago Mitill)
扉を閉ざして、耳をふさげば、
僕は一人、一人きり、
誰も僕を傷つけないし、誰も僕を見ない、
そんな、安穏とした世界に浸れるだろう。
けれど、僕は一人、一人きり。
扉を開いて、外へ踏み出せば、
きっと、僕は傷つくだろう、
でも 一人じゃない、きっと 一人きりじゃない。
優しい 自分だけの楽園を守ることしかできないほど、
僕は臆病な人間では、なかったはずだ。
傷ついてもいい、僕は人として、
人とともに、生きたい。
いつだって、扉は開いていたんだ。
僕が、気付かないふりをしていただけで。
ここを飛び立つ勇気が、ただ僕に足りなかった。
扉を開いて、外へ踏み出せば、
世界は、それほど 優しくはないだろう。
でも 一人じゃない、きっと 一人きりじゃない。
(2007年・筆)
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