辞書を引用する不埒な人々/蘆琴
 
何かについて述べる際、先ず辞書の定義を持ち出す輩は何を考えているのでしょう。
彼らは考えていないのです。
自分で考えずに読書ばかりに耽溺して、知識ばかりを溜め込む連中の仲間です。
定義とは各人が備えているもので、其々が少しずつ違っています。
やたらと広辞苑を引く人間は、元来漠然たる言葉というものを自分で型に嵌めておく、
という文筆家が当然為すべきことを怠っているのです。
そもそも文芸のうち詩を志す諸氏にとって、大衆が共有する意義を抽出しただけの辞書なんぞつまらないものでありましょう。
言葉其の物と其の連なりは自らの心の内に体系化させておかねばならない。
血肉として吸収しきれぬ言葉や知識を使う人間の文章は、一瞥の内に分かるものです。
言葉は絶対的な権威ではないのです。
自由自在に操る人の少ないことが残念でなりません。
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