今日/たけ いたけ
 
夏バテの深海魚が
歩いている松の木に
君の手が植わっていた
それが非常に涼しく見えている

齧られた世界に
君の唾液が混じっているかと思うと
それだけで明日のことは考えなくて済むし
虫の残していった
左脚にも同じ匂いを感じる

墓石に君の名を書いたし
洗濯物にも君の言葉を指で書いた
タバコの煙を思い出して
ゆらゆらと砂が酔っている
野良猫が胡散な目で見てくる

全てがエロスである日がある
破滅した昨日を魚が高速で泳ぎきり
日陰にくつろいだ日が今日であればいいし
混じりっ気だとか
ぬくもりだとか
カラスの死骸で消えていい

でんぐり返りする丸虫
幻のような金魚にムズガル男の子
混じりっ気なく世界は洗剤で満たされていたし
同じように
混じりっ気なく腐敗臭と醗酵の薫りがしていた


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