ウサギの部屋にて/山本 聖
ぽつりと無意識のうちになにごとかを呟くと
空間が
言葉を得る瞬間瞬間に伸び上がってゆく
さまざまな色で
さまざまな匂いで
世界はどこまで密集し続けるのか
ひしめきあってぱん、ぱん、と弾けあうのか
キューブ状のワンルームが蜂の巣のように
ひとひとりひとりの空間を為す
言葉と同じように
言葉を吸収して
この世でただひとつの部屋であらんとする
ある部屋は愛らしすぎるような気恥ずかしい花に満ち
ある部屋は愛おしくなるような血に塗れ
意味があることだらけ
まるでそれが価値のあることであるかのように
私もいつか全身をウサギの毛に覆われて
もはや何も発することもできずに息を詰まらせたとき
ぱん、と弾けるのだ
そして意味のないただ濃厚な匂いだけを発する物体と化して
世界の幾万幾千万の破裂を聞こう
きみの破裂をも聞こう
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