雨細工の町/望月 ゆき
 
新しい長靴に浮かれて
水溜りを探し
右足をそっと入れると
次の瞬間 目が回り
どこかに迷い込んでしまった



「噴水の広場」

あやまって
噴水の真下に立ってしまった
と 思ったら
それは雨粒で
地面から雨が噴出しては
地面に落ちていた
広場には もう一人
バケツを抱えて
降ってくる雨粒を集める
少年



「街灯の下」

舗道に広げられた
灰色の布きれの上には
いくつものビー玉が転がっている
近づくと ビー玉に見えたそれは
ぷよぷよと鈍く弾み
曇り空から降る雨粒とそっくりで
布きれの上から
今にも逃げ出しそうだった
かたわらに座
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