降り来る言葉 XXXII/木立 悟
火と花と手
小さな胸
火は花は手
風と声が水になり
窓の外を流れている
音の影は 鳥に分かれる
古い息が聞こえくる
指に触れて 景は走る
何かから逃れようと振り向く
緑の格子と
冷たい音がもたらす明かりと
文字だと思われることのない文字たちと
火も心も 同じかたち
互いを焼いて やまぬかたち
どうしてもひとつに なれぬかたち
羽は水になりたがり
震えは水を吸いたがり
細い鉛は 細い鉛に消えてゆく
火に触れたくて泣きつづける子を
闇はどうしてなぐさめればいい
近寄ることさえできぬ輪の淵
管を通る低い光が
なろうともせず唱になり
滴のなかの業の火を聴く
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