ポケットに速度/AB(なかほど)
晴れない空がある
晴れた空もある
ゆれた気持ちがある
手垢のついたおもちゃがある
微分したキャンディーは溶けて
積分した気持ちは夕焼けに
父がいた
母がいた
笑っている
僕がいた
吉じいは
ズボンの右のふくらんだポケットから
アメリカ色のミルクキャンディーをくれた
夕べ
いつまでもアメリカ色のキャンディー
だとばかり思っていた左のポケットから
バイオレットが出てきたよ
そのまま
左のポケットに押し込む
と
そこから夕焼けが
さらさらとゆっくりと
溶けてゆくものが僕で
微分した虹がかかって
積分した夏が駆け抜けてゆく
またひとりの友が溶けてなくなった夜
僕の全ても溶けてしまいそうで
こころの手で強く握ろうとした
fromAB
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