山都/円谷一
 
という決まりがあるの と言い落ち込んだ様子で彼方の山脈に視線を注いでいた 心にある決心が湧き上がってきた 君の小さな手を握って この山都から出ない? と持ち掛けた 君は一瞬嬉しがったがすぐに戸惑いの表情を見せた そんなの無理よ… 山都人は一生ここから出てはいけないのよ! もし掟を破ってここから出たら… 神に雷を撃たれて死んでしまうというわ… そしたら私… あなたと結ばれることだってできないわ! どうすればいいの?… どうすればいいの?… どうすればいいの?… あぁ 分からない… 分からないわ… 教えて…!!


君は泣きついてきた 頭を撫で 一緒にここを出ようと誓い合いキスをした 君は大きな純白の翼を広げ満月を背に飛び上がった 君に腕を腰に回されて大空に体を預けて 何処からともなく集まってきた雷雲が目の前で光ったと思うと意識がふっと消えていった
気が付くとそこは天国だった すぐ隣には君がいてもう重荷だった翼は無くなっていた 君は笑顔で果てしなく広がる大地を指差し 共に駆け出して行った
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