夏の日/由希
 
優しい、せせらぎ

豊かな水の
湧き出すところ

素足で岩場を歩き
小さな蟹を捕まえた日は遠い



空には光が溢れ

眩しさに視界を覆えば
木の匂い



水面に映る緑葉
風が吹くたびに揺れて

まだ言葉を知らなかった僕は
ただきれいだと思った



戻ってきた兄さんが笹の舟を作り
そっと流れに乗せた

ゆっくりと、遠くへ運ばれていく舟

哀しくなって
大きな手をぎゅっと握った



いつの日か

あの舟を奔流で拾うのは
大人になった、僕なのかも知れない
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